2015年6月28日日曜日

スコットランドのお土産 その6


こちらはケルト文様をあしらった肩掛けのバッグです。肩紐のにはタグが付いて、calzeatの名前が。やっとスコットランドの製品に会えました、これはボーダー地方のウール専門業者で、もともとはジャカード織機でネクタイ用のウール生地を製造販売していた会社です。現在は自社製の生地を使ってファッション製品と家庭用品を製造し、店舗も4店あります。デジタル化した電子ジャカード織りを得意とし、ケルト文様、バイキング文様をあしらった多彩な製品を扱っています。デザインが素晴らしく、博物館でもこの会社の製品をたくさん眼にします。


こちらはクエイクと呼ばれる錫製の酒器です。スコットランドでは伝統的な形で、もともとは木製のものが多かったようですが、現在は錫製がほとんどです。

これは小ぶりなものですが、さまざまなデザイン、大きさのものが売られており、香りが溜まらないのでテイスティングには不向きですが、雰囲気が良く、バーンズナイトで行われるハギスの儀式など、特別の機会では実際にウイスキーを飲むのに使います。

上の製品はやはりスコットランド製。グラスゴーとアラン島行きのフェリーが出るArdrossanの間にあるKilbirnieにある、Pewtermillという会社の製品です。家族経営の小さな会社で、クエイクのほか、装飾品など、さまざまな錫製品を製造しています。


これはケルビングローブ美術館のショップで購入したペンダントです。


よく見ると、見たことのあるようなバラの文様が。これはチャールズ・レニー・マッキントシュのデザインしたバラを使ったペンダントです。作ったのはKit Heathという装飾品製造業者です。英国のブランドで、Heritageというシリーズでケルト風の製品をたくさん出していて、このマッキントシュのペンダントも、そのひとつです。

WEBでは女性のモデルを使って製品をアピールしており、なんとなく女性デザイナーのような印象を受けますが、Kit Heathは男性です。会社はイングランドのDevonにありますが、スコットランドとなんらかのつながりのあるデザイナーかどうかは分かりませんでした。東北のお土産を九州で作っているような感じですが、日本製と言われればそれまで、という感じです。


Kit Heath Ltd
Millennium House, Brannam Crescent, Barnstaple, 
Roundswell Business Park EX31 3TD

2015年6月26日金曜日

スコットランドのお土産 その5


Royal Museum of Scotlandのショップで入手したピンバッチです。バイキング船の形をしていて、デザインも良く、銀色の輝きが綺麗です。スコットランド、イングランド、アイルランドとも、バイキングとは歴史的に深いつながりを持つ国です。

ピンバッチは日本へ持ち帰りやすく、集めている人も多く、実際に装飾品としても使えるので、お土産として適しています。

さて、台紙には英国製のお土産(Souvenirs made in UK)の文字が。スコットランド製ということではなさそうです。


台紙の裏を見ると、Rowena Souvenirsの名前が。これはバーミンガムの金属加工会社DJHのギフト部門の名前です。スプーン、ピンバッチなど、ケルト、中世、スコットランド、バイキングなどバラエティ豊かな製品を製造販売しており、スコットランドを含む英国各地の名所でこのブランドの商品を見ることが出来ます。

ちなみに、Rowenaは英国の伝説の美女で、アングロ=サクソンの首長Hengistとブレトン王の妻Vortigernの娘として知られていますが、歴史家の間では実在の人物ではなかったと考えられています。

スコットランドのお土産という話からは外れますが、DJHはギフト商品以外にも興味深い金属製品を作っています。バーミンガムには自社工場があり、立体造形に優れ、インテリア用品、精密金属模型、アクセサリーなど、それぞれのブランドを持っています。興味のある方は、こちらをご覧ください。


こちらはScone Palaceで入手したピンバッチ。宮殿のオフィシャルなグッズです。


が、裏を見ても詳細は一切ありません。案外に、オフィシャルな商品に詳細な情報がないことが良くあります。


こちらはスターリング城のショップで購入したもの。左がスターリング城、右がアザミです。アザミはスコットランドの国の花で、スコットランドのどこへ行ってもなんらかの形で目にします。

パッケージもなくこのままの状態で売られていため、製造者は分かりませんが、スコットランドのお土産 その4でご紹介したD&Cが同じアザミのデザインを使っており、カタログにも同じスタイルの指貫が載っていることから、同社の取り扱いではないかと思います。

日本ではあまり見ませんが、陶製の指貫はコレクションとして人気があり、スコットランドの土産物屋ではよく目にします。

DJH (GROUP) LTD
Project House
Villa Real
Consett
Durham
DH8 6BP

2015年6月23日火曜日

スコットランドのお土産 その4


エジンバラのMilitary Tattoo Shopで入手しました。The Royal Bank of Scotlandの1ポンド紙幣・・・のデザインのティッシュペーパーです。価格も安く、軽く、実用品なので、お土産に好適です。

中国製ですが、ラベルにはD&Cのロゴが。実は、グラスゴーの業者です。製造というより、ギフト商品の総合商社のようなもので、紙製品、陶器、タオル、エプロンなどあらゆるものを扱います。

こちらにはカタログもあり、見ればスコットランドのお土産屋さんにあるようなものが一通り載っていて、とても楽しい。

ちなみに、この1ポンド紙幣の人物は第3代アーガイル公爵アーチボルト・キャンベル、The Royal Bank of Scotlandの創始者の一人で、初代総裁となった人です。


エジンバラのポケット地図です。St. Gilesの教会のショップで購入しました。これも中国製。上手に畳んであって・・・


開くと・・・


元の4倍サイズの地図になります。通りの名前の一覧表もあって、地図としての最低限の機能も備えています。


小さなエジンバラ城のミニチュア。小さくて持ち帰りやすく、しかも安価。でも、これもしっかり中国製。良く見るとELGATEの名前が。これは南イングランド、ケント州の会社で、ギフト用品、玩具、家庭用品、ガーデニング用品の卸売りをしている会社です。ギフト用品はイングランド、ウェールズ、アイルランド、スコットランドのものを広範に扱っており、スコットランドを見るとキーホルダー、陶器、ミニチュアを含む玩具など、やはり多彩な品揃えです。

こうして見ると、中国製といっても、発注自体はスコットランドやイングランドから出されているようで、商品としての魅力、安さも手伝って肯定的な気持ちも生まれてきます。が、これがスコットランド製だったらという気持ちも捨てきれない。悩ましいところです。


Elgate Products Limited 
1 Patricia Way 
Pysons Road Ind Est 
Broadstairs 
Kent 

2015年6月3日水曜日

National Museum of Scotland その8


1階にあるエントランスです。若干の展示もありますが、広大な空間を贅沢に使い、間接照明で照らされ、独特な雰囲気を使った場所になっています。

東の端にはショップが、西の端にはレストランがあります。

このほか、上の階にもティールームがあり、ゆっくりと館内を回ることが出来るようになっています。


ショップは広く、さまざまな価格帯の商品が豊富に用意されています。ただ、あまり売れ行きの芳しくないものもあるようで、セールというコーナーもありました。案外に良いものが安く提供されていていました。


こちらは新館1階のショップです。ルイス島のチェス駒とボードのセット、駒のデザインを使ったグッズがいろいろと売られていました。

ちなみに、映画「ハリーポッターと賢者の石」でハリーとロンが指していたチェスのセットはこのルイス島のチェス駒でした。(ボードの上で殴り合いをしていましたが。)

作者のローリングがハリーポッターを書いていたティールーム、Elephant Houseはここから歩いて数分です。


ルイス島のチェス駒のほかにも、いろいろなグッズが売られていました。

National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年5月31日日曜日

National Museum of Scotland その7


旧館東側にあるAnimal Worldの展示です。思い切り詰め込んだ感じですが、その分見応えがあります。右下に一部見えているのはティラノサウルスの化石標本で、現在も過去も一緒に展示されているのが分かります。


日本の刀剣の展示です。展示品の管理は非常に良く、綺麗にディスプレイされています。

実際に展示されているものは一部で、日本刀、鍔(ツバ)、柄頭、目貫(メヌキ)などが多数所蔵されています。多くは慶長以降のものですが、中には15世紀のものという、ちょっと気になるコレクションもあります。(刀剣の時代ごとの違いはこちらをご覧ください。)


パイプを使った音のアトラクションです。組み合わせで通話先を変えることが出来ます。子供たちが大喜びして組み合わせを変えていました。


作業用ロボットの操作が体験できるアトラクションです。子供たちが実際に手を触れて楽しめる展示が数多く用意されているのが印象的でした。


1813年製造のWylam Dillyです。Tyneの技師、William Hedleyの設計で、石炭輸送に使われていました。

National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年5月29日金曜日

National Museum of Scotland その6



モダンな新館に隣接する旧館の建物です。かつてのRoyal Museumで、1861年に建設が始まり、1866年に開館しました。外観はロマネスク・リヴァイヴァル建築ですが、内部は優雅な鉄骨の建築物です。


巨大な天窓を備えたグランドギャラリーです。内部は白く塗られ、非常に明るい空間を作り出しています。


建物は地上4階、1階にはカフェテリアとショップがあり、展示は各階のテラス、さらに奥にも展示室があります。展示物は自然科学、文化、歴史と多岐に渡り、スコットランドだけでなく世界中の文化を学ぶことが出来ます。


旧館2階の生活文化の展示です。これは20世紀初頭の展示ですが、20世紀後半のコーナーではコンピューターやテレビゲームも展示されていました。

National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年5月26日火曜日

National Museum of Scotland その5


博物館を上まで登り詰めると、展望台になっています。ただ、危険防止なのか、壁や植え込みが高く、風景の下の部分がちょっと見にくい。

写真は博物館から北を望んだ風景です。左はエジンバラ城、その手前はミリタリータトゥーの観客席、右手の塔はかつてのHighland Tolbooth St John's Church、現在はエジンバラ国際フェスティバルの本部、The Hubです。


下から見ると展望台はこんな具合。飛んでいるのは鳩ですが、エジンバラは海が近いのでカモメを見ることも多いです。


博物館の北東の風景。中央はカールトンヒル、右手にはフォース湾、その向こうには対岸が見えています。左手に見える塔はThe Tron Churchで、17世紀に建てられた教会ですが、現在はショップやレストランが入っています。静かな夜には幽霊が出て、太鼓をたたくと言われています。


南西の風景です。右手の時計塔はかつてのエジンバラ市立診療所ですが、診療所は移転、現在はQuartermileという住宅、オフィス、貸し店舗の入ったモダンなビルへの建て替えが決まっています。

左手の茶色い屋根は、エジンバラ大学のMedical Schoolです。


東に見えるのはアーサーズシートです。見る方向で、だいぶ形が違います。

The Hub
The Tron Church
エジンバラ市立診療所
Quartermile
Medical School

National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年5月14日木曜日

National Museum of Scotland その4


博物館4階、5階はIndustry of Empireのコーナーです。展示されているのは蒸留器と蒸気機関車。蒸留器はGlenfiddich蒸留所で使われていたもの、機関車は1861年製造のEllesmere号です。


Ellesmere号はスコットランド製で、英国で動態保存される最古の機関車といわれています。

スコットランドも含め、英国では蒸気機関車発祥の地ということもあり、蒸気機関車、客車、駅などが数多く保存され、実際に乗れる路線もたくさんあります。詳しくはこちら、またはこちらをご覧ください。

実際に乗るには、こちらが分かりやすいかもしれません。


北海油田のオイルリグの模型、左の赤い2つの塊は地下に向かって岩盤を掘り抜くためのダイアモンドカッターです。


スコットランドの有名人を紹介するコーナーでです。プロゴルファーのサンディ・ライル、ソウルオリンピック銀メダリストのリズ・マッコルガン、東京オリンピック銀メダリストのボブ・マクレガーなどなど。

下のヘルメットはスコットランド出身のレーシングドライバー、Jackey Stewartのものです。BRM、マトラ、ティレルと3つのF1チームでグランプリ優勝をし、最後は自らStewart GPを立ち上げて息子のポールと一緒に走っていました。


同博物館の1階には11971年にスペインGPでデビュー、6回の優勝を決めたTyrrell 003 F1も展示されています。


休息用の椅子です。なかなか良いサービスですが、もう少し居心地の良いものを用意してくれても良いように思います。


National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年4月30日木曜日

National Museum of Scotland その3


16世紀の刀剣類です。一番左の大剣はクレイモアと呼ばれ、平均的な長さは柄も含めて1.4メートル、重さは2.5キロほどです。典型的な両手剣で、日本刀がだいたい1.5キロくらいなので、かなり重めですが、柄の先に球状の重りがつき、案外に振り回しやすいそうです。2番目、4番目はもち手を守るバスケットと呼ばれるガードがついています。3番目はやはり両手剣ですが、クラムシェル(アサリの貝殻)型のガードが付いています。


中世以来のクレイモアでの戦闘は、両手剣ですので剣一本での攻守となりますが、近世のハイランダーの伝統的な剣術は、盾の裏にダークと呼ばれる短剣を隠し持った使った二刀流と言われています。利き手にバスケット付きの長剣、反対の腕に盾を構え、手には大振りなナイフを持ち、剣で攻め、隙を突いてナイフで手傷を負わせるというものです。

博物館2階、3階は近世スコットランドを扱ったScotland Transformed(変わるスコットランド)の展示ですが、変わるというより激動の時代と言った方が適切かもしれません。宗教改革同君連合ジャコバイトの蜂起が起きた時代の品々が展示されています。


18世紀の銃砲です。上は当時の典型的なフリントロック式、火打石(flint)をネジ止めしたクラシックな様式です。別の場所には角笛型の火薬入れもたくさん展示されていました。

下は大砲に装てんする薬きょう(breech-chamber)です。昔の大砲というと、先込めをイメージしますが、元込めの大砲は14世紀ごろには発明されていて、ビールマグのような容器に火薬を詰め、大砲の根本に弾丸とともに装てんして使っていました。


ヴァージナル(virginal)と呼ばれる鍵盤楽器、チェンバロの一種です。ルネッサンス後期~バロック初期に人気のあった楽器で、同種の楽器の中でもシンプルな構造で、弦は単線で横に張られています。

15世紀中盤~16世紀中盤の作で、恐らくスコットランド製と考えられています。


古い教会の祭壇と説教壇です。保管状態も良く、美しい彫刻が施されています。幅はそれほどではありませんが、高さがあり、これが収められていた建物のサイズはかなり大きかったのではないかと思います。


背が高く2フロアでも収まらないので、上の階の天上を越えた展示となっています。

National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年4月15日水曜日

National Museum of Scotland その2


新館一階の展示室にあるルイス島のチェス駒です。11個あるはずですが、展示は10個でした。キングが3人、クイーンが2人、ビショップ2人、ナイト1人、ルーク2人、クイーン以外は大きさもバラバラ、デザインも微妙に違います。

アウターヘブリディーズ諸島最北端のルイス島で1831年に発見されたこのチェスの駒は謎でいっぱいです。Malcolm Sport MacLeodがCamas Uigの砂丘で見つけた石の小箱にはチェスの駒78個、何らかのゲームに使われる円形のコマ14個、ベルトバックルの彫り物1個が入っていました。

チェスの駒はセイウチとクジラの歯を彫ったもので、諸説あるのですが、ノルウェーのTrondheimで12世紀に作られ、当時、同地を含む一帯を支配していたノルウェー人が持ち込んだものと推測されています。中世のチェス駒は珍しく、貴重なコレクションのひとつです。

78個の内訳はキング8、クイーン8、ビショップ16、ナイト15、ルーク12、ポーン19、大きさでグループ分けすると5種類のサイズに分けられます。8セットが入っていたのかもしれませんが、それにしてはポーンが少なすぎます。なにより、誰の手に渡るものだったのでしょう。

見つけたMalcolm Sport MacLeodは農作業小屋で人に見せ、それをRoderick Ryrieが購入、彼はエジンバラのSociety of Antiquaries of Scotlandで披露、Kirkpatrick Sharpeが11個を、大英博物館の代理人が残りを購入しました。

現在National Museum of Scotlandで展示されているのは、Kirkpatrick Sharpeが入手した11個で、残りは大英博物館で展示されています。


ギョロリとした眼が特徴的、愛嬌があり非常に味があります。デフォルメされた大胆なデザインですが、細密な文様が彫られた部分もあり、細工はなかなかのものです。

いくつかのチェスの駒は赤く着色されていたことが確認されています。今は白黒ですが、かつては赤白が普通だったようです。

それにしても、どういう考えでこの11個を選んだんでしょう?出来の良いのを選んだということでしょうか?


同じく1階に展示されているモニムスクの聖骨箱(聖人の遺骨お納めた箱)です。750年ごろにアイオナ島の僧侶によって作られたと考えられており、デザインはピクトとアイルランドの混成、木箱を銀と銅で覆うアングロサクソンの技術が用いられています。一部着色されており、今も鮮やかな色合いを残しています。

かつては数多く存在した聖骨箱も多くが失われ、非常に貴重な存在です。

中身は失われていますが、もとは聖コロンバの遺骨の一部が納められ、スコットランド軍が戦地で戦士の祝福に用いたといわれていますが、それを裏付けるものは確認されていません。

アバディーンの西にあるモニムスク村から程近い、フォーブス一族の居所、House of Monymuskで保管されていたため、その名が付いています。16世紀まではForglenにあったと言われています。

1933年にロンドンでオークションにかけられるはずでしたが、The National Art Collection Fundが出資して、聖骨箱は博物館の収蔵品になりました。


Lamont Harpの名で知られるハープです。もとはLamont一族が所有していたもので、少なくとも15世紀の作とされ、スコットランドでもっとも古い2つのハープのひとつです。材質はシデの木で、真鍮の金具が用いられ、現在は弦が失われていますが、一部に金属弦が使われていたのではないかと考えられています。

ハープは結納品のひとつとしてLamont一族からRobertsons of Ludeの一族に贈られ、19世紀初頭まで同家で保管されていました。現在はJohn Stewart of Dalguiseが所有し、博物館に貸与されています。

偶然ですが、ハープの向こうにルイス島のチェス駒が見えています。


National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年4月13日月曜日

National Museum of Scotland その1


National Museum of Scotlandはエジンバラの中心地、ジョージ4世橋の南端、Chambers Street沿いにある博物館です。建物は1866年開館の旧館と1998年開館の新館に別れ、2つは通路でつながっています。

写真は新館の東側です。新館のパトロンには当初チャールズ王子が加わっていましたが、設計に十分な論議が尽くされていないという理由から、出資を辞退してしまいました。


新館の西側です。建物には数多くのスコットランドのモチーフが使われていると言われていますが、良く分かりません。建物の上部の白い部分は、なんとなくアザミかなとも思われますが、確信はありません。ただ、非常にモダンで印象的な建物であることは確かです。

当初、旧館はThe Royal Scottish Museum、新館はMuseum of Scotlandと呼ばれていたため、現在もこの呼称で呼ばれることがあります。旧館には世界各国からの古今の収集物、自然科学に関する展示が、新館にはかつてのNational Museum of Antiquities of Scotlandからの収蔵品が展示され、スコットランドの有史以前から現代に至る歴史的な展示が行われています。


1998年の開館後、改装されて16の展示室が追加され、2011年にリニューアルオープン。収蔵庫に眠っていたおよそ8千点が追加で展示されました。


新館西端のエントランスです。広大な空間ですが、この奥にはさらに広大な展示室が広がり、スコットランドの歴史的収蔵品がこれでもかと言うほど展示されています。

館内は無料のWiFiが利用可能です。


National Museum of Scotland
Chambers Street
Edinburgh EH1 1JF

2015年4月9日木曜日

Mairi Mhor: Her Life And Songs

Mairi Mhor: Her Life And Songsは1994年に製作されたテレビ映画で、BBCで放送されました。全編ゲール語、英語の字幕つきという特異な作品です。監督のMike Alexanderは主にテレビ番組の制作で知られていますが、舞台はスコットランドが多く、ゲール語の映画はこの作品のほかにAn Ceasnachadhがあります。

Mairi Mhor 1

Màiri Mhòr nan ÒrainことMarry MacPhersonは1821年、スカイ島の生まれです。家族は小作農を営み、一時はカナダに移住していましたが、帰国し、グラスゴーを経て再びスカイ島に戻ってきました。

1844年、彼女はスカイ島を離れ、インヴァーネスへ行き結婚し二人の子供をもうけますが、1871年には夫が死に、生活のため家政婦として働きに出ます。ところが、働いていた家で窃盗があり、彼女が疑われました。彼女はゲール語しか出来ませんでした。わけも分からず英語の裁判が終わってみると、彼女の禁固刑が確定していました。

1年間の収監の中で、彼女は自分の無実を訴えながら、その怒りと悲しみの中でゲール語の歌を作り始めます。そして刑期が終わると、 政治活動に関わりながら、機会あるごとに自作の歌を披露するようになりました。その歌は詩的な美しさよりも、むしろ心情を明瞭に力強く歌い上げており、怒りのようなものがこめられることもあります。

現在、Màiri Mhòr nan Òrainは19世紀で最も多作なゲール語詩人として知られており、Nuair a bha mi òg、Eilean na cheòなどはスコットランドのスタンダードなゲール語歌謡として広く知られています。

映画はMairiが逮捕されるところから始まり、詩人として名を成し、故郷に帰るまでが描かれていますが、合間ごとに歌が挿入され、彼女の作品を聴くことが出来ます。映画の中の歌はバラ島出身のCatherine-Ann MacPheeが歌っており、CDも出ています。

Mairi Mhor: Her Life And SongsはYouTubeで全編見ることが出来ます。

Mairi Mhor

2015年3月1日日曜日

Stone of Destiny


Stone of Destiny(運命の石)とは紀元500年ごろ、スコットランドの元となるスコット族がアイルランドから持ち込んだ石で、始めはArgyllにありましたが、9世紀中頃からはScone Abbeyで守られていました。Scone Abbeyにあったので、Stone of Scone(スクーンの石)、スコットランドの歴代の王が戴冠に用いたので、The Coronation Stone(戴冠の石)とも呼ばれます。

石は270ミリx425ミリメートルx660ミリ、重さは260キロで金属製の輪が2つついています。旧約聖書のヤコブの枕石とも言われています。 創世記28章によれば、ヤコブはこの石を枕に眠り、夢の中で神から土地と子孫の繁栄と身の居安全を保障され、眼を覚ました後にこの石を記念碑としたと言われています。

スコットランド独立戦争のさなかの1296年、イングランド王エドワード1世は戦利品としてこの石をイングランドに持ち帰り、ウェストミンター寺院の戴冠の座に収めました。この後のイングランド王、さらに英国王はこの椅子に座って戴冠してきたのですが、1950年のクリスマスの数日前、グラスゴーの大学生4人によって石は持ち出され、一時的にですがスコットランドに戻されました。Stone of Destinyはその事件を描いた映画です。


 4人の大学生は2台の車でグラスゴーを出発、18時間かけてロンドンにたどり着き、守衛の夜回りの時間を調べてのち、一人を車に残し、3人が闇夜に紛れて寺院に侵入、椅子を壊して石を取り出しました。この際、石は床に落ちて2つに割れてしまいました。そして、まず小さい方が車のトランクに納められ、大きいほうはさすがに重く、コートに包まれ引きずってもう一台の車に運ばれました。そして、それぞれの石はまずイングランドに隠されました。石が無くなっている事を受け、イングランドとスコットランドの境界線は封鎖されました。


2週間後に封鎖が解かれ、石はついにスコットランドに持ち込まれ、石工のBaillie Robert Grayが雇われ、石の修復が行われました。この際、Grayは一枚の紙の入った真鍮管を入れたのですが、この紙に何が書かれているのか、今日に至るまで分かっていません。

その後警察に情報があり、石はArbroath Abbeyで発見され、大学生4人が事情聴取されましたが、起訴されないことになりました。彼らは石をスコットランドに取り戻し、スコットランドの自治権拡大とアイデンティティの覚醒をしたいと考えていました。スコットランドでは、彼らは英雄視されることになりました。

映画は史実にドラマ性を上手に取り込み、感動的な仕上がりとなっています。映画の手法は非常にクラシックですが、丁寧な筋運びで無理がなく、石が盗まれた後の物語の盛り上がりがとても良いです。


The Stone of Destinyは1996年に公式にスコットランドに返還され、現在はエジンバラ城にあります。


Westminster Abbey
Deans Yd
London
SW1P 3PA