新館一階の展示室にあるルイス島のチェス駒です。11個あるはずですが、展示は10個でした。キングが3人、クイーンが2人、ビショップ2人、ナイト1人、ルーク2人、クイーン以外は大きさもバラバラ、デザインも微妙に違います。
アウターヘブリディーズ諸島最北端のルイス島で1831年に発見されたこのチェスの駒は謎でいっぱいです。Malcolm Sport MacLeodがCamas Uigの砂丘で見つけた石の小箱にはチェスの駒78個、何らかのゲームに使われる円形のコマ14個、ベルトバックルの彫り物1個が入っていました。
チェスの駒はセイウチとクジラの歯を彫ったもので、諸説あるのですが、ノルウェーのTrondheimで12世紀に作られ、当時、同地を含む一帯を支配していたノルウェー人が持ち込んだものと推測されています。中世のチェス駒は珍しく、貴重なコレクションのひとつです。
78個の内訳はキング8、クイーン8、ビショップ16、ナイト15、ルーク12、ポーン19、大きさでグループ分けすると5種類のサイズに分けられます。8セットが入っていたのかもしれませんが、それにしてはポーンが少なすぎます。なにより、誰の手に渡るものだったのでしょう。
見つけたMalcolm Sport MacLeodは農作業小屋で人に見せ、それをRoderick Ryrieが購入、彼はエジンバラのSociety of Antiquaries of Scotlandで披露、Kirkpatrick Sharpeが11個を、大英博物館の代理人が残りを購入しました。
現在National Museum of Scotlandで展示されているのは、Kirkpatrick Sharpeが入手した11個で、残りは大英博物館で展示されています。
ギョロリとした眼が特徴的、愛嬌があり非常に味があります。デフォルメされた大胆なデザインですが、細密な文様が彫られた部分もあり、細工はなかなかのものです。
いくつかのチェスの駒は赤く着色されていたことが確認されています。今は白黒ですが、かつては赤白が普通だったようです。
それにしても、どういう考えでこの11個を選んだんでしょう?出来の良いのを選んだということでしょうか?
同じく1階に展示されているモニムスクの聖骨箱(聖人の遺骨お納めた箱)です。750年ごろにアイオナ島の僧侶によって作られたと考えられており、デザインはピクトとアイルランドの混成、木箱を銀と銅で覆うアングロサクソンの技術が用いられています。一部着色されており、今も鮮やかな色合いを残しています。
かつては数多く存在した聖骨箱も多くが失われ、非常に貴重な存在です。
中身は失われていますが、もとは聖コロンバの遺骨の一部が納められ、スコットランド軍が戦地で戦士の祝福に用いたといわれていますが、それを裏付けるものは確認されていません。
アバディーンの西にあるモニムスク村から程近い、フォーブス一族の居所、House of Monymuskで保管されていたため、その名が付いています。16世紀まではForglenにあったと言われています。
1933年にロンドンでオークションにかけられるはずでしたが、The National Art Collection Fundが出資して、聖骨箱は博物館の収蔵品になりました。
Lamont Harpの名で知られるハープです。もとはLamont一族が所有していたもので、少なくとも15世紀の作とされ、スコットランドでもっとも古い2つのハープのひとつです。材質はシデの木で、真鍮の金具が用いられ、現在は弦が失われていますが、一部に金属弦が使われていたのではないかと考えられています。
ハープは結納品のひとつとしてLamont一族からRobertsons of Ludeの一族に贈られ、19世紀初頭まで同家で保管されていました。現在はJohn Stewart of Dalguiseが所有し、博物館に貸与されています。
偶然ですが、ハープの向こうにルイス島のチェス駒が見えています。
National Museum of Scotland
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