Stone of Destiny(運命の石)とは紀元500年ごろ、スコットランドの元となるスコット族がアイルランドから持ち込んだ石で、始めはArgyllにありましたが、9世紀中頃からはScone Abbeyで守られていました。Scone Abbeyにあったので、Stone of Scone(スクーンの石)、スコットランドの歴代の王が戴冠に用いたので、The Coronation Stone(戴冠の石)とも呼ばれます。
石は270ミリx425ミリメートルx660ミリ、重さは260キロで金属製の輪が2つついています。旧約聖書のヤコブの枕石とも言われています。 創世記28章によれば、ヤコブはこの石を枕に眠り、夢の中で神から土地と子孫の繁栄と身の居安全を保障され、眼を覚ました後にこの石を記念碑としたと言われています。
スコットランド独立戦争のさなかの1296年、イングランド王エドワード1世は戦利品としてこの石をイングランドに持ち帰り、ウェストミンター寺院の戴冠の座に収めました。この後のイングランド王、さらに英国王はこの椅子に座って戴冠してきたのですが、1950年のクリスマスの数日前、グラスゴーの大学生4人によって石は持ち出され、一時的にですがスコットランドに戻されました。Stone of Destinyはその事件を描いた映画です。
4人の大学生は2台の車でグラスゴーを出発、18時間かけてロンドンにたどり着き、守衛の夜回りの時間を調べてのち、一人を車に残し、3人が闇夜に紛れて寺院に侵入、椅子を壊して石を取り出しました。この際、石は床に落ちて2つに割れてしまいました。そして、まず小さい方が車のトランクに納められ、大きいほうはさすがに重く、コートに包まれ引きずってもう一台の車に運ばれました。そして、それぞれの石はまずイングランドに隠されました。石が無くなっている事を受け、イングランドとスコットランドの境界線は封鎖されました。
2週間後に封鎖が解かれ、石はついにスコットランドに持ち込まれ、石工のBaillie Robert Grayが雇われ、石の修復が行われました。この際、Grayは一枚の紙の入った真鍮管を入れたのですが、この紙に何が書かれているのか、今日に至るまで分かっていません。
その後警察に情報があり、石はArbroath Abbeyで発見され、大学生4人が事情聴取されましたが、起訴されないことになりました。彼らは石をスコットランドに取り戻し、スコットランドの自治権拡大とアイデンティティの覚醒をしたいと考えていました。スコットランドでは、彼らは英雄視されることになりました。
映画は史実にドラマ性を上手に取り込み、感動的な仕上がりとなっています。映画の手法は非常にクラシックですが、丁寧な筋運びで無理がなく、石が盗まれた後の物語の盛り上がりがとても良いです。
The Stone of Destinyは1996年に公式にスコットランドに返還され、現在はエジンバラ城にあります。
Westminster Abbey
Deans Yd
London
SW1P 3PA
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